マネージャーのあなたは、次のような悩みを抱えていませんか?
事業計画書を作るとき、どんな根拠を元に作ればいいか分からない。
役所とか銀行に出す事業計画書と、実際の事業計画って違うものなの?
次のような経験をもつ私(@taqnock)が、あなたの悩みに答えます
- 現役の転職エージェント管理職
- 複数年に渡る事業計画書の作成経験あり
- 事業計画書レビューの経験あり
もし、あなたが事業計画を作るのが初めてだったら、どこから手を付けていいか分からないですよね?
私も、初めて事業計画策定を任された時、同じ状況でした…。
事業計画を作る際、まず”仮説”を設けて計画を作っていくことになる。
ここで問題になるのは、仮説と仮説の根拠をどうするか。
具体的には、現在までの実績値にどの程度の成長率を折り込むかということ。
この記事を読むと、効率的に仮説の根拠を作るポイントが分かります。
人材紹介の事業計画書を作るときに確認すべき4つのデータ
事業計画をつくるときに確認すべき4つのデータとは、次の通り。
- 一人当たり生産性
- セグメント情報
- 登録者の獲得経路割合
- 目標成約率
なぜ、4つのデータが重要なのかというと、事業戦略上の各工程段階におけてキーとなる変数情報が得られるから。
この変数情報によって、仮説の精度を上げることができる。
具体的には、これらのデータは次のIR情報の中で確認できる。
- 有価証券報告書
- 決算説明資料
特に、数多あるIR情報の中でもチェックしておくべき会社は、次の通り。
- 株式会社MS-Japan
- 株式会社ジェイエイシーリクルートメント
なぜなら、この2社は全事業に占める人材紹介の割合が高いから。
つまり、IR情報に書いてある変数情報の”純度”が高いということ。
”混じりっけなしの人材紹介数値”が取れる。
人材紹介事業比率は、具体的には次の通り。
- 株式会社MS-Japan→98.8%
- 株式会社 ジェイエイシーリクルートメント→86.3%※
※海外事業は除外していますが、8割方が人材紹介事業
では、それぞれ具体的にIR情報の中身を見ていきます。
【第1のデータ】一人当たり生産性
事業計画作成において、まず目標年度利益を元に、目標年度売上高を設定する。
次に、目標年度売上高は、何人のコンサルタントがいれば達成できるのかを算出する。
つまり、次の算定式。
目標年度売上高=一人当たり生産性×コンサルタント数
目標年度予算をブレイブダウンする際、必ず必要となる数値が一人当たり生産性。
MS-Japan
一人当たり生産性は、次の通り。
ちなみに、FYとは”FiscalYear”の略で、会計年度のこと。
折れ線グラフを見ると分かるように、一人当たり生産性は順調に伸びている。
ここがポイントで、どのくらいの成長率を見込むかを考慮する必要がある。
成長率に影響を与える要素としては、次の3つ。
- 増加社員数
- 社員教育体制
- 求人・求職者需要
MS-Japanの成長率は、次の通り。
- FY20:0.04%
- FY19:14.21%
- FY18:9.28%
- FY17:5.45%
- FY16:12.63%
影響要素を当てはめて考えてみると、次の通り。
- FY20:0.04%→コロナ禍による求人・求職環境の悪化
- FY19:14.21%→増加社員数(6名)を抑え、生産性向上
- FY18:9.28%→採用強化(14名)を行い、生産性低下
- FY17:5.45%→採用強化(22名)を行い、生産性低下
- FY16:12.63%→増加社員数(10名)を抑え、生産性向上
JAC
JACの一人当たり生産性データは、次の通り。
- FY20:2,172万円(成長率-10%)
- FY19:2,412万円(成長率-7.37%)
- FY18:2,604万円
MS-Japanとは、成長率の点で明暗が分かれている。
一人当たり生産性の数値自体は近しい数値となっていることが分かる。
つまり、上場企業の基準値としては、2,500万円前後だということ。
【第2のデータ】セグメント情報
セグメント情報は、セグメント別売上高を予測するのに有用。
例えば、一人当たり生産性のデータと拠点人数を掛け合わせれば、拠点売上高が予測できる。
そうすると、自社の拠点別売上目標配分が適正なのかをチェックできる。
その他、次のような予測も可能。
- 拠点別売上家賃比率
- 拠点別×求職者属性別売上高
- 拠点別×業界別売上高
あくまで人数ベースの予測値にはなるが、検証データとしては有益。
MS-Japan
拠点別セグメント情報は次の通り。
例えば、大阪支社の予測売上高を算出してみる。
全体売上高4,098,556千円×大阪支社23名÷全社員数155名=608,172千円
業界別・求職者属性別セグメント情報は、次の通り。
例えば、大阪支社の有資格者予測売上高を算出してみる。
有資格者紹介実績54,451千円×大阪支社23名÷全社員数155名=8,079千円
これらの予測データは、正確ではないものの、市場(上場企業)限界値を見極める数値として有益。
JAC
MSに比べて拠点数が多く業界別の業界セグメントも細かく表記されている。
さらに細かい業界セグメント別売上予測をすることができる。
MS-Japanの際と同じ計算ロジックを使えば、”大阪×金融業界”の予測売上高を算出することができる。
【第3のデータ】登録者の獲得経路割合
自社サイトからどの程度登録者獲得ができているかを示す割合。
逆に言えば、ポータルサイトからどの程度人材獲得をしているかを示すデータということ。
つまり、コスト戦略及び利益計画に大きく関わるデータであるため、重要となる。
MS-Japanの自社サイト登録割合は、次の通り。
- FY20:98.1%
- FY19:79.3%
MS-Japanの場合、非常に高い割合となっているが、上場企業・大企業ならではの状況。
なぜなら、オウンドメディアに対する大規模投資によって実現できている数値だから。
自社に置き換えて考えた際、目標売上高に対して、どれだけの登録者母数が見込めるかを予測する。
次に、その補填として、ポータルサイトへの資金投下をどれだけ行うかを算定する。
【第4のデータ】目標成約率
目標成約率は、売上目標を集客数にブレイクダウンする段階で重要となる指標。
具体的には、必要求人数と必要面談数を算出する場面で必要となる。
- 売上目標→RA成約目標件数→必要求人数
- 売上目標→CA成約目標件数→必要面談数
JACの場合、求人成約率は、次の通り。
- FY18→24%
- FY19→23%
- FY20→30%(目標)
人材成約率は、次の通り。
- FY18→9%
- FY19→10%
- FY20→20%(目標)
いずれも、成長率は数%程度であることが分かる。
目標成約率の変動要素は、次の通り。
- RA・CAの習熟度
- 受注求人数及び受注確度
- 集客求職者数及び成約確度
変動要素が多いため、取れる戦略の幅も広くなる。
目標成約率の実効性を高めるためには、明確な戦略立案が欠かせない。
ここまで読んだあなたは、次のような疑問を持ちますよね?
役所や銀行に出す事業計画書と、実際の事業計画って違うの?
人材紹介創業時に出す事業計画書は至ってシンプル【最低限の内容だけ】
役所へ提出する創業時の事業計画書は、実際の事業計画とは異なり、あまり参考にならない。
なぜなら、最低限のB/S情報しか記載しないから。
役所の場合、具体的に書く項目は、次の3項目のみ。
- 職業紹介計画(区分、有効求職者見込数)
- 職業紹介の業務に従事する者の数
- 資産等の状況
東京労働局の様式だと、次の通り。
日本政策金融公庫の場合、上記に加え、P/L及びC/Fの計画が追加されている。
- P/Lとは、損益計算書。企業のある一定期間における収益と費用の状態を表す。
- C/Fとは、キャッシュフロー計算書。会計期間における資金の増減を表す。
なぜなら、”借入”を行う性質上、返済に際して必ず必要となる計画だから。
有価証券報告書や決算説明資料をベースとした事業計画を策定した方が、リアルな状況に即した計画が作れる。
まとめ:人材紹介の事業計画書はIR情報をベースに組み立てると実現性がアップする
それでは、今日の内容をまとめます。
事業計画をつくるときに確認すべき4つのデータとは、次の通り。
- 一人当たり生産性
- セグメント情報
- 登録者の獲得経路割合
- 目標成約率
役所や銀行へ提出する創業時の事業計画書は、実際の事業計画とは異なり、あまり参考にならない。
有価証券報告書や決算説明資料をベースとした事業計画を策定した方が、リアルな状況に即した計画が作れる。
ここまで読んでくれたあなたは、きっとリアルな事業計画書を作るためのポイントが理解できたはず。
事業計画をどのように現場に落とし込んでいくかについても気になる、という方はこちらをどうぞ。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。