この記事は、次のような悩みを持つリクルーティングアドバイザーの方に役立ちます。
クライアントから『年齢制限ってしちゃダメなんだっけ?』と聞かれたけど、しっかり答えられなかったんだよね…
リクルーティングアドバイザーのあなたはなら「募集・採用において、年齢制限をしてはいけない」という原則は、もちろん知ってますよね?
ただ、求人企業の採用担当者から、次のように細かい話をツッコまれたら、しっかりと答えられますか?
年齢制限の例外って、どんな場合があるんだっけ?
「正直、ちょっと怪しいな…」という方は、この記事をぜひ最後まで読んでください。
私自身は、社内のメンバーに対して次のような指摘や確認に多く関わってきました。
この求人、年齢制限がかかっているけど、例外規定が使えるケースなの?
ただ、例外規定は数が多く、内容も分かりづらい。
そうすると、現場のコンサルタントの理解はあいまいになりがち。
この記事を読めば、採用担当者への説明やアドバイスを的確にできるようになります。
年齢制限の原則と6つの例外【人材紹介の現場で頻出する例外③には要注意】
募集・採用において原則、年齢制限はできない。
ただし、これには”6つの例外”がある。
6つの例外とは、次の通り。
- 【例外①】定年年齢
- 【例外②】他の法令の規定
- 【例外③】長期勤続によるキャリア形成
- 【例外④】特定の職種において、労働者数が相当程度少ない、特定の年齢層
- 【例外⑤】幻術・芸能の分野
- 【例外⑥】60歳以上の高齢者、35歳~55歳未満、または特定の年齢層の雇用を促進する施策
うっ、項目多いな…。
となりますよね?
ひとつずつ丁寧に解説していきますので、安心してください。
6つの例外の中でも、よく利用される+誤解の多い規定が”長期勤続によるキャリア形成”の規定。
ここは、後ほど詳しく解説していきます。
【例外①】定年年齢
定年年齢とは、具体的には次の通り。
定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
これを3つの条件に分解すると、次の通り。
- 定年がある場合
- 期間の定めのない労働契約である場合
- 定年年齢を上限として
つまり、単に「社内規定上の定年だから」という理由だけでは、年齢制限はNGということ。
無期雇用であることが必須。
【例外②】他の法令の規定
他の法令の規定とは、具体的には次の場合。
労働基準法その他の法令の規定により、年齢制限が設けられている場合
労働基準法その他の法令において、特定の年齢層の就労が禁止・制限されている業務については、年齢制限が認められる。
他の法令とは、一例を挙げると次の通り。
- 労働基準法第62条(18歳未満の方が、危険有害業務をすることを禁止している規定)
- 警備業法第14条(18歳未満の方が、警備業務をすることを禁止している規定)
【例外③】長期勤続によるキャリア形成
長期勤続によるキャリア形成とは、具体的には次の通り。
長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
特に、この例外規定において、多くの勘違いが起こるので要注意。
よく聞く採用担当者の勘違いとしては、次のようなもの。
若手社員の長期キャリア形成を目的としていれば、年齢制限していいんだよね?
なぜ、勘違いが多く生まれるか。
それは、この規定を使うのに満たさなければならない条件の多さにある。
具体的には、以下3つの要件。
- 職業経験について不問とすること
- 新卒者以外の者について新卒者と同等の処遇にすること
- 期間の定めのない労働契約であること
特に、職業経験について”不問”にするという部分がポイント。
つまり、”職歴がなくてOK”にするということ。
また、新卒者と”同等の処遇”にするという点には注意が必要。
”同等の処遇”とは、賃金などが新卒者と完全に一致しなければならないということではない。
新卒者と同様の訓練・育成体制、配置・処遇をもって育成しようとしている場合であればOK。
ちなみに、「若年層等」とあるように、対象年齢の幅はあいまいになっている。
目安としては、おおむね45歳未満とされています。
この規定の趣旨としては、新卒一括採用~終身雇用という日本型雇用との調和。
ただ、”日本型雇用”それ自体が近年は薄れつつありますよね。
この傾向が規定にどう影響を与えていくのか、今後の動向にも注目です。
【例外④】特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層
特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層とは、具体的には次の通り。
技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
用語の定義をみていくと、次の通り。
- 特定の年齢層:30~49歳のうちの特定の5~10歳幅の年齢層
- 相当程度少ない:同じ年齢幅の上下の年齢層と比較して、労働者数が2分の1以下
文字だと理解しにくため、こちらの図で理解することがおすすめ。
左右の年齢層の人数の1/2になっていなければいけないということ。
組織構成が上記のケースに該当していない場合、この規定はそもそも適用できないということに注意が必要。
【例外⑤】芸術・芸能の分野
芸術・芸能の分野とは、具体的には次の場合。
芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合
一例としては、芸術作品のモデルや演劇などの役者募集・採用のような場合。
「子役募集」などが該当する。
これは、直感的に理解できますよね。
子役募集で求人をかけて、年配の方がオーディションに来られても、確かに困ってしまう…。
【例外⑥】60歳以上の高齢者、35歳~55歳未満、または特定の年齢層の雇用を促進する施策
60歳以上の高齢者、35歳~55歳未満、または特定の年齢層の雇用を促進する施策とは、具体的には次の場合。
60歳以上の高年齢者、就職氷河期世代(35歳以上55歳未満)または特定の年齢層の雇用を促進する政策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる人に限定して募集・採用する場合
この規定を簡潔にまとめると、以下3つのケースを想定している。
- 60歳以上の高年齢者
- 就職氷河期世代(35歳以上55歳未満)
- 特定の年齢層の雇用を促進する国の施策の対象となる特定の年齢層
就職氷河期世代(35歳以上55歳未満)の規定を使用するには、4つの要件がある。
- 令和5年3月31日までの間
- 期間の定めのない労働契約を締結することを目的(正社員)
- 職業に従事した経験があることを求人の条件としない(未経験OK)
- ハローワークに同じ求人を提出
ハローワークに提出してないと、そもそも使えない規定であることに注意が必要。
特定の年齢層の雇用を促進する国の施策の一例としては、「特定求職者雇用開発助成金」が挙げられる。
特定求職者雇用開発助成金は、高齢者や重度障害者等の就職困難者を雇用するための助成金。
ここまで読んだあなたは次のような疑問を感じますよね?
”特定の年齢”に関する規定がごちゃごちゃして分かりづらい…
【答え】整理すると3つの規定がある。
違いのイメージとしては、次の通り。
- 他の法令の規定→他の法律で規制され”マイナス”されているイメージ
- 特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層→組織構成によって制限され”マイナス”されているイメージ
- 特定の年齢層の雇用を促進する国の施策→雇用の促進施策で”プラス”するイメージ
また、人材紹介の現場では、採用担当者から次のような質問を受けることもあるかと思います。
そもそも、なんで年齢制限ってしちゃダメなの?
質問に備えて、制度の趣旨を答えられるよう準備をしておきましょう。
人材紹介の現場で質問される”年齢制限NGの根拠”への対策【制度趣旨を理解しておく】
年齢制限制度の根拠法は”改正雇用対策法”。
制度の趣旨は、大きく分けて次の2つ。
- 【趣旨①】一人ひとりにより均等な働く機会が与えられるようにする
- 【趣旨②】少子高齢化のなかで経済の持続的な成長をするためには、個々人が年齢ではなく、その能力や適性に応じて活躍の場を得られることが必要
1つ目の”均等な雇用機会”の部分は、雇用の大前提。
採用担当者も十分理解しているので、多くの説明を行う必要はない。
一方、2つ目の”経済の持続的な成長”の部分は、転職エージェントの使命とも言える役割。
リクルーティングアドバイザーが採用担当者に対してアドバイスをし、提案をしたいところ。
具体的には、次の2つの要素をすり合わせ、調整していく重要な役割。
- 採用担当者が固執してしまいがちな採用年齢イメージ
- 転職市場における現実の人材状況
特に、採用担当者側が”想定していない”年齢層の採用を行うメリットを提案できるかがポイント。
これができることで転職エージェントとしての収益も最大化できる。
それには、前提として組織理解が重要となる。
ただ、実際には、次のように言われてしまうケースも多々ある。
うちは社長の意見が絶対。社長は20代しか雇う気ないから、求人票にそう書いておいてほしい。
こんな時あなたならどうしますか?
人材紹介の年齢制限について採用担当者が分かってくれない場合【相手の立場でアドバイス】
リクルーティングアドバイザーとしては、法令違反になるような採用担当者のコメントに対して、次のように伝えるのは簡単。
それは、法律違反になるので、ダメです。
ただ実際には、次の3つの理由から、難しいですよね?
- 企業側から成功報酬をもらう収益モデル
- 理解してもらえなければ、求人票が作れない
- 制度に違反しても、強い罰則規定がない(強制力がない)
なので、おすすめの伝え方は”同じ立場”からのアドバイスをする方法。
具体的には次の通り。
コンプライアンス面に加えて、企業のブランドイメージ低下につながるので、やめた方がいいですよ。
相手目線でアドバイスすることが効果的。
また、年齢制限に関する規定は、求人票上だけの話に留まらない。
つまり、選考過程においても、例外規定以外の理由で採否を決定することは法令違反になる。
例外規定以外の理由で不合格と伝えるようなことがないよう注意が必要。
クライアントへの説明用には、厚生労働省が出している以下のリーフレットが使いやすい。
まとめ:人材紹介の年齢制限は6つ例外を理解した上で、顧客目線での運用ができるかが肝
では、今日の内容をまとめます。
募集・採用における年齢制限をすることは、原則できない。
ただし、これには下記6つの例外がある。
- 【例外①】定年年齢
- 【例外②】他の法令の規定
- 【例外③】長期勤続によるキャリア形成
- 【例外④】特定の職種において、労働者数が相当程度少ない、特定の年齢層
- 【例外⑤】幻術・芸能の分野
- 【例外⑥】60歳以上の高齢者、35歳~55歳未満、または特定の年齢層の雇用を促進する施策
年齢制限制度の根拠法は”改正雇用対策法”。
制度の趣旨は、大きく分けて次の2つ。
- 【趣旨①】一人ひとりにより均等な働く機会が与えられるようにする
- 【趣旨②】少子高齢化のなかで経済の持続的な成長をするためには、個々人が年齢ではなく、その能力や適性に応じて活躍の場を得られることが必要
採用担当者の理解を促進する説明方法は、相手目線のアドバイスをすること。
具体的には「コンプラ順守をしないことで、企業ブランドイメージ低下につながる」とアドバイスをする。
ここまで読んだあなたなら、”年齢”に関する法律の原則と例外について理解できたんじゃないでしょうか?
その他にも、人材紹介の現場で必要になる法律知識全般についても知りたい
という勉強熱心なあなたは、こちらを参考にしてください。
リクルーティングアドバイザー業務全般についても復習しておきたい
というあなたは、こちらを参考にしてください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。